怯むも挑むも決め兼ねているうちに、渡の手が僕の首にかけられた。

そして次の瞬間、彼は僕を両手で締め上げた。

テーブル越しとは思えない力だった。
僕は一瞬固まった後、仰天し必死でもがき始めた。
首に力を込めたが、渡の指は首の筋肉を縫って、気管や動脈を締め付ける。手を外そうと腕に爪を立て応戦したが、その手はびくともしない。

僕と渡の背格好はほとんど変わらない。どちらかといえば僕の方が、多少上背があった。
しかし激昂した渡には敵わなかった。この尋常じゃない力はどこからきているというのか。

ともかく僕は死に物狂いでもがいた。
唇から、かはと息が漏れ、それ以上空気を吸えないことに恐怖が湧いてくる。

ぼおおという妙な耳鳴りが聞こえだした。
視界がちかちかと危険信号のように色を変え、机に乗り、見下ろしてくる渡の顔が霞んだ。

殺されるかもしれない。
渡にこのまま殺されるかもしれない。


すると、僕の耳に怒鳴り声のような甲高い叫びが聞こえた。


――――――渡!やめて!!


それはすぐ真横から聞こえた。

誰だ?
この家には僕と渡しかいない。
一体誰だ?

渡は聞こえていないのか、以前正気を手放した表情で僕を射抜き、凄まじい力で僕を締めあげる。