様々なことが一時に起こった。憔悴しきった僕が自分の部屋に戻ったのは夜九時過ぎだった。

渡は明日検死解剖され、明後日密葬の後、荼毘に付される。

暗くて蒸し暑い部屋に入り、エアコンをつける。ぶんと起動する備え付けの古いエアコン。
帰り道に買った缶コーヒーをパイン材のテーブルにおいて、僕の心は動かなかった。

部屋にはまだ渡の私物がたくさんあった。
コンビニの制服、雑誌や文庫、この前僕があげた詩集、二人で折半して買ったCD、勝手にうちの風呂場で洗ってベランダに干されたスニーカー。
現実感がなかった。今日は依然昨日の続きでしかないように思われた。

とにかく喪服をそろえなければならない。
携帯電話で実家にかける。はい、白井です、と母の声が聞こえ、僕は自分であることと喪服が入り用であることを端的に告げた。

「どうしたの、喪服なんて」

母がやや驚いた口調で問う。僕はその言葉で再び現実に立ち戻された。

本当だ、いったいどうしてこんなことになってしまったんだろう。
僕は今朝、海に行く予定だったのに、どうして夜には喪服の心配をしているのだろう。

涙があふれ出し滝のように頬を流れ、フローリングに落ちていった。
そのまま号泣してしまった僕に母親には余計なことは何ひとつ言わず、翌日夜には喪服が着くよう手配してくれた。