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「…2人は幸せに暮らしました。」
「もーいっかい!」
毎日寝る前になると、布団の中で寝転ぶ私に、父は隣に座って絵本を読む。
「もう5回目だぞ〜?早く寝なさい。」
父はベッドの横のろうそくを消す。
真っ暗になり、窓から青い月が見える。
「私もシンデレラみたいにエドワード王子と結婚するの」
私はうっとりとした表情でベットに倒れこむ。
「えー?お父さんじゃないのか」
「だってお父さんとは今結婚してるみたいなものだもん。」
「でもお父さん寂しいよ、お前がお嫁にいったら」
父が私の頬を撫でる。
「大丈夫、お父さんも一緒にお城で暮らすから」
「そうかそうか、お母さんも喜ぶな」
2人で笑いあう。
「でも、シンデレラだって苦労したんだぞ。何年もうちの中で家事をさせられて、
魔法も12時には溶けちゃったんだから」
「うん。でも私、シンデレラみたくなれるんだったらどんなに苦労してもいいわ。」
「お父さんはあんまり苦労しないでほしいな。…でももし、どうしてもシンデレラになりたいっていうんだったら、苦労するより大切なことがある。」
「なーに?」
「優しい心を持つこと。」
「持ってる!」
「勇気を持つこと。」
「持ってる!…たぶん」
「そして何より」
父が私の隣に座る。