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ジャッキーがマリアの部屋に出て行ってしまった理由がある。

俺が風呂に入っている途中だったので、
ジャッキーが部屋のドアを開けたのに気がつけなかった。

犬を寮で飼うのに慣れていなかったので起こった事故だ。

それをマリアに見られてしまったからもうどうしようもない。

「とにかくこいつは俺の部屋に置いておく」

そう言って、部屋に戻ろうとマリアの部屋の電気を消した。


しかし、ジャッキーがマリアの部屋から出て行ってしまった。

つまり、寮の中か、あるいは寮の外に逃げ出してしまったのだ。

俺は慌ててマリアの部屋を出て捕まえに出た。

いろいろな場所を探したが、すでにジャッキーは遠くへ逃げてしまったようでいる気配はさらさらなかった。

暗い時に探しても仕方がないし、
腹が減れば戻るかもしれない。

そう思い、マリアの部屋に戻った。


すると、マリアはベッドにいなくて、
部屋の電気がついていた。


まさか、と思い自分の部屋に戻ると、
…やはりあいつは忍び込んでいた。

しかも俺のノートを手に持って…!




「何やってんだ」


音を立てず近づき、身動きを取らせないよう後ろに立った。

マリアはしばらくしてからやっと答えた。

「ロバートさん…どこにいたんですか」



ばっとノートを上から取り上げる。

「あっ!何するんですか、まだ読んでたのに…」


「人の日記を読む奴があるか!
さっさと寝ろ!」

もう3時になりそうだ。

「ロバートさんって意外とロマンチストなんですね」

「はぁ?」

突然の言葉にロバートは固まった。

どこからそんな話がでてきたのか見当もつかない。

「だって…そこの本棚にファンタジーの物語がたくさんあったから」


マリアは本棚を指差して言った。

「見たのか…」


お前も人のこと言えるほどデリカシーってもんがないな。

「ごめんなさい、でもどうしても気になったんです!人に自分が読む本を見られるのが嫌だって…分かりました。でも…」

デリカシーがない訳ではないという言い訳だった。

「分かった」

そこまで言うなら認めてやる。
見てしまったもんはしょうがない。