それを気にし始めたら、なかなか眠れなかった。
「あーもう!」
マリアは布団をばさっと投げ出すと、
もこもこのスリッパを履いて歩き出した。
ぱちん、と電気をつける。
しんとしている夜中。
寮の生徒は皆眠っていて、
空気がまるで違う。
古い木の香りが鼻を抜け、
冷たい空気がマリアを震わせる。
「まだおきてるかな…」
執事部屋はマリアの部屋の南側にある。
扉は常にベッドから見えるが、中はまだ見たことがない。
まさに開かずの扉…
入るなと言われているが、そう言われたら気になるのだから仕方ない。
床が軋まないように忍び足で近づく。
ドアノブに手をかけた。
キィいー
高い音が響いた。
扉が開くと、ロバートの姿は無かった。
「あれ?」
さっきジャッキーを連れて行って、
一緒に部屋に入った…と思ったんだけど
部屋の電気はついていなかった。