「私、先生のために頑張ってる」

「合格したら、私の告白を真面目にきいて、本気で考えて」

その強い瞳に吸い込まれるように久方は一花を見つめた。



「先生、スキ」



しばらく視線をゆらしながら、久方は無言でいた。

そして、言った。


「うれしいよ」


「本当だよ。澤口」



そして静かな声で続けた。


「だけどな、澤口、勉強は自分のために頑張るんだ。そうやって自分の力をためて、使って乗り越えていくこと。それがこれからの澤口の力になるんだよ」



一花と目を合わせて言う。

「その中に俺は入れないでほしい」

「君の人生は、君だけのものだ」




それを聞いた、一花が涙をためて言う。


「いやです」

「この地球上で、この日本中で、今、こうやって出会えたことを宝物のように思っています。だから先生、そんな風に言わないで。」

さらに続ける。

それは叫びに近い懇願だった。

「先生は大人だから、色々な経験があるのかもしれないけれど、私とこうやって話していることは奇跡なんです。だから先生……、泣かないで……」