「だったら何?ここを通してくれないから
悪いんじゃない!私は莉月様の婚約者なのよ!」


その言葉に真白さんの瞳が揺らいだ。


「貴方・・・よくこんな事をして
莉月の婚約者だなんて言えるわね?」


真白さんが敬語じゃなくなった。
それに加え、真白さんの普段から考えられない冷たい目・・・
俺でさえも、冷や汗がでた。


「なっ!偉そうに!いい子ぶらないでよ!」

「いい子ぶってなんかいないわ。
ただ莉月の大切な家族に傷を負わせたのが気に入らないだけ・・・?莉月?」


再び真白さんが組員の切り傷を触ろうとすると、不機嫌になっている若が
真白さんの手をつかみ自分の方に引っ張った。


「他の男に触るな」

「だって怪我してる・・・」

「・・・おい、早く手当てしろ」

「「へっへい!」」


これはまた、あの人が誰かに妬くことがあるなんて、驚きだ。


「な!?莉月様!なんでそんな女なんかを!」

「あ゛ぁ゛?誰の女に向かって『そんな』
なんて言ってやがる。」

「ヒッ」


所詮、他の女なんかはこの程度だ。
この程度の若の殺気でビビっているようでは、傍になんて入れるわけもない。
まぁ、顔色一つかえずに抱きしめられているのも凄いと思いますが・・・


「莉月?女性には優しくしないと」

「あ?こんな女知るかよ」


そう言っても、若に抱きしめられている真白さんが笑顔になることはなかった。


女を力尽くで追い出すと、すぐ若から離れた真白さん。
その行動には俺も驚いた。