車に向かおうとすると、出入り口の方が
騒がしかった。


「何をしている。若が通るぞ」


いきなり真面目になった拓哉は
さっきのふぬけた感じは1つもない。
いつもこうだと助かるんだがな。


「わっ若!」

「莉月様!会いたかったわ~」


そう言って若に抱きついた女

こいつは確か一度だけ若が抱いた女だったな。


「誰だてめぇ」

「ひどいですわ!美香子です!」


若は真白さん以外の女の名前は覚えてもいない。
いや、眼中にすら入ってない。
不味いな・・・こんな所を真白さんが見たら・・・


「どうかしたんですか?」


鈴の音のように綺麗な声が響き、
若の目はさっきとは打って変わり、
優しい目になった。


「真、真白・・さん」


まだ真白さんの事をよく思ってない奴は
ここにも大勢いる。
そんな中に入ってきたら、


「何よあんた」


女が真白さんを睨みつけているにも関わらず、真白さんはそんものを気にせず
1人の組員の傷を触った。
多分、この女がつけたものだ。


「痛かったでしょう?早く手当てしましょう。・・・それで?これをやったのは
貴方ですか?」


普段とは比べ物にならないほど、
真白さんの声は低かった。
少し・・・いや、かなり怒っている。