人を信用したらまた裏切られる。
すぐに捨てられる。

その言葉が私の中では焼き付いていた。


なのに・・・この人は優しすぎる・・・

   ポ タ ・ ・ ポ タ ・ ・


「泣いてるのか?」

 
泣いてる?これが涙っていうものかな?
しょっぱい・・・
だけど、温かい


「泣いてろ。1人で泣くな。
泣くときはいつも俺の前だけにしろ」


私は泣き続けた。
今まで流したことも感じたこともない
感覚を不思議に思いながらも
止めることはできなかった。



やっと涙が止まり、私は小刻みに震えながら、ずっと莉月に寄っかかっていた。


「あの帝王が女に優しくするなんて
明日は台風かな~」

「てめぇはでてけ」

「ひどっ!」


この二人は仲がいいのか分からなくなる。
だけど・・・信用してるんだな。
私にもいつかはそんな日がくるのかな?


「どうかしたか?」

「いえ・・・」


何でこうなってしまったのかな?
感情なんてものはなくて
何かに恐れて、後ろを向くのが怖い・・・
すぐにまた、あの暗闇に戻される。


「・・・拓哉、帰れ
明日まで顔出すな」

「えぇ~独り占めかよ~
ずりぃよなぁ」


そういいながらも出て行った拓哉?さん
それを見ていると、
莉月に顔を包まれた。


「お前は俺だけを見てろ」


莉月の手は、不機嫌でありながらも
とても暖かく感じて、
自分から莉月の手をとっていた。


「真白?」

「綺麗な・・・手をしています。」

「・・・俺は綺麗なんかじゃない。
俺はな真白・・・橘組の若頭をしてる。」


橘組・・・それは私でもわかる。
西を守っている橘組。確か、草薙組もいたはずだ。そして、
若頭は冷酷非情と言われるほど、
怖い人だと聞いていた。

そういえばあそこの娘を若頭の嫁に
させるとか言ってたな。
なら、私は捨てられるのか・・・


「何考えてるのかは大体わかったぞ。
いいか、誰がなんと言おうと俺はお前を手放したりしない。」

「だから、そんな苦しい顔をしないでくれ」


この人には何でも見透かされる。
今までなかったことだから
私になれないけど・・・
この人の傍にいたいと思うのは、我が儘だろうか。