…ねぇ。
きっと、あたし今、笑顔だと思う。

なのにどうして?

涙が止まらない。

ゴメンね。
泣いてゴメンね。

涙が止まらないよ?
止まらないの、涙。



涙が頬を濡らしていく。

元太の姿も歪んじゃうよ。



「サキ…」

元太の声が震えている。

「泣くなよ…」



気がつけば君に惹かれていた。

いくらでも思い出せるよ、君とのこと。
次から次へと、キリがないくらい。

思い返せば、こんなにも君が好き。



今…、今なら言える。



「…ばいばい、ゲンタ」

瞬きをしたら涙が落ちて、元太の顔が見えた。

だから、あたしはもう一度笑う。

元太も笑う。
優しい、あったかい、元太らしい笑顔で。

あたしの、大好きな元太の笑顔。



「さよなら」

また滲む涙をこらえて、別れの言葉を。



「うん。さよなら」

元太の目から零れたひと粒の涙。

それは、何の涙でしたか?



元太は背を向けて、ゆっくりと歩きだした。



行かないで。

ねぇ。
涙だけ残して、行かないで。
笑顔だけ残して、行かないでよ。