あたしは初めて横を向いた。
すると、ただ真っ直ぐあたしを見つめる元太と目が合った。
「誰も、おらんよ」
元太が口を開く。
「誰もおらん。…俺もおらん」
暗示のように。
唱えるように。
「何言ってんの?」
「お前、泣きそう」
元太のこの時の顔に、なぜか胸が熱くなった。
「…まさかっ」
ふっ、とあたしは笑った。
「なぁ、泣けよ?」
それでも、元太は真面目な顔してそう言い放つ。
だから、元太から目が離せなかくなった。
「見んかったことにしちゃる。だけん、泣け」
「…嫌。泣かない」
あたしが頭を振ると、元太は目元をゆるめて、優しい顔で微笑んだ。
「なぁ、もう強がんな? 精一杯じゃろ?」
ポンポンと、元太の手があたしの頭を撫でる。
「だって…忘れちゃいそうで…」
君の優しさも、彼女の苦しみも。
君と並んだあの道も。あの公園、あの夏祭り、よく見上げた空の青さも。
全部。
思い出になっちゃうじゃん。
すると、ただ真っ直ぐあたしを見つめる元太と目が合った。
「誰も、おらんよ」
元太が口を開く。
「誰もおらん。…俺もおらん」
暗示のように。
唱えるように。
「何言ってんの?」
「お前、泣きそう」
元太のこの時の顔に、なぜか胸が熱くなった。
「…まさかっ」
ふっ、とあたしは笑った。
「なぁ、泣けよ?」
それでも、元太は真面目な顔してそう言い放つ。
だから、元太から目が離せなかくなった。
「見んかったことにしちゃる。だけん、泣け」
「…嫌。泣かない」
あたしが頭を振ると、元太は目元をゆるめて、優しい顔で微笑んだ。
「なぁ、もう強がんな? 精一杯じゃろ?」
ポンポンと、元太の手があたしの頭を撫でる。
「だって…忘れちゃいそうで…」
君の優しさも、彼女の苦しみも。
君と並んだあの道も。あの公園、あの夏祭り、よく見上げた空の青さも。
全部。
思い出になっちゃうじゃん。