「サキ、ほーして自分に言い聞かせちょらん?」

「なに? いきなり…」

「いきなりじゃないが。いつもほーして自分に言い訳しちょーみたいにさ」

サオはずいっとあたしに近づくと、眉尻を微妙に下げた、神妙な顔つきをした。

「ねぇ、なしてそぎゃんゲンタを好きにならんようにするん?」

「え…」

好きに、ならないように…?

「理由があるなら教えてよ? あたしには、サキが自分の気持ちを押し殺しよるようにしか見えんけん」

あたしが元太を…、好きにならないようにしてる?

「まさか…」

「じゃあ、自分のココに聞いてみんしゃい」

サオはあたしの胸の真ん中を指さした。

「サキにとって、ゲンタはどぎゃん存在か? って」

あたしは胸に手を当てて、キュッと、制服の胸元を掴む。

だって元太は…。
あたしにとって元太は、『どんな人』?



いつも、元太の隣はとても安心した。

なぜ?

それは…君と一緒に、いるようだったから。

そう、あたしは知ってたの。

あたしはいつだって、どこかに君を求めていた。探していた。

言葉を。姿を。
元太と被る、面影を。

だから、あたしは…―――。
だから、あたしは、ずっと。