「もういいけん、帰ろう?」

元太があたしの左手をキュッと握った。

その声がすごくすごく切なくて。

手だけじゃなくて、心臓まで握られたみたいに、胸が締め付けられた。

「…うん」

竦んでた足もいつの間にか力は抜けていた。



悲しかった。
苦しかった。
悔しかった。

繋がれたその手の体温だけが、現実味を持っていた。

体はここにあるのに、心は宙をさまよってるみたいに。



元太なのに。
わかってるのに。
どうして…?



ゴメンね。

元太は悪くない。
誰も悪くない。

悪いのは…あたし?

それでもあたしは、自分を正当化しようとしてる。

だって、しょうがない。仕方ない。

そう、言い聞かせて。



「…ねぇ、どーなってるかな? サオたち」

「さあ? たぶん、うまくいっちょるけん」

「そっか。そーだよね」



ここにいるのは…元太だよ。

こんなに胸がいっぱいで、苦しくて切ないのに。
だけど、君の隣はなぜかくすぐったくて、心地いいから。



だから、胸がつまったんだ。