「じゃあ、…お前は俺のこと、誰だと思っちょる?」

「え?」

「お前が気づいちょらんわけないが」

いつもより低い元太の声が、なんだか怖くて唇を噛みしめた。
前を向くのさえ嫌になって、足を止めた。

「なしてそぎゃん怖い顔しちょーか?」

いつもの元太の声に、元太の方を見たけど、暗闇の先の顔は見えない。

「…見えるの?」

「だってそこ、街灯点いちょー」

あたしは上を見上げた。
立っている場所は、街灯の明かりにちょうど照らされていた。
それがまるですべて見透かされてるようで、また目線を暗闇に移す。

「ねぇ、どうして?」

あたしがもう一度尋ねると、元太はようやく口を開いた。

「俺さァー、誰かの代わりなのー?」

変に間延びした元太の声。
静かな空間によく響く。

「…お前、俺と誰か、勘違いしたじゃろ。それも、何回も」



ねぇ。
胸が締め付けられるように、痛いの。
…けど、何も言えない。

あたしも、気づいてたよ。
自分の、不甲斐なさくらい。

元太が思い出とリンクするの。

その姿が。
その声が。
…その香りが、まるで。


君の笑顔が、一瞬目の前に浮かんだ。
たった一瞬。