どことなく冷たい秋の風。夏を、少しずつさらってく。
吹き終わった頃に、元太は口を開いた。
「なあ。俺、聞きちょーことがあんだけど」
そう言うと、元太はあたしの横を通り抜けて、今度は元太があたしの一歩前を歩く。
「…なに?」
前を歩く元太の背中を見て歩いた。
届きそうで届かない、その微妙な距離がもどかしくて。
元太から香る匂いが、また胸を掠める。
…まるで君がいるかのような。
錯覚になる。
「お前の中おるんって…誰?」
「…、え?」
元太に投げかけられた言葉は、一気にあたしをリアルさの中に押し込めた。
今度は、振り返った元太と目が合った。
「何…言ってんの?」
「誰がおるん? そこに」
「何のこと?」
頭ではわかってる、『何のこと』か。
でも体はしらばっくれる、都合よく。
あたしは何くわぬ顔で、笑ってる。
笑ってる。
元太はまた前を向いて歩き始めた。
「…ねえ、待ってよ?」
もう空は暗くて、元太がよく見えない。
だからか、見えなくなると余計不安になる。
吹き終わった頃に、元太は口を開いた。
「なあ。俺、聞きちょーことがあんだけど」
そう言うと、元太はあたしの横を通り抜けて、今度は元太があたしの一歩前を歩く。
「…なに?」
前を歩く元太の背中を見て歩いた。
届きそうで届かない、その微妙な距離がもどかしくて。
元太から香る匂いが、また胸を掠める。
…まるで君がいるかのような。
錯覚になる。
「お前の中おるんって…誰?」
「…、え?」
元太に投げかけられた言葉は、一気にあたしをリアルさの中に押し込めた。
今度は、振り返った元太と目が合った。
「何…言ってんの?」
「誰がおるん? そこに」
「何のこと?」
頭ではわかってる、『何のこと』か。
でも体はしらばっくれる、都合よく。
あたしは何くわぬ顔で、笑ってる。
笑ってる。
元太はまた前を向いて歩き始めた。
「…ねえ、待ってよ?」
もう空は暗くて、元太がよく見えない。
だからか、見えなくなると余計不安になる。