「なして?」

「だって、左手塞がってるんだもん…」

元太と繋がれた左手に目線を移す。

「あぁ…。貸して」

元太があたしの手から、カステラの袋を取った。
その時にまた、フワッとあの香りがした。

「こげすれば、食べれる」

「え?」

「こっから食えばいいが。な?」

元太は袋をあたしの方に差し出した。

「あ、ありがと…」

袋に手を入れた。
まだほんのり温かいカステラを手に取る。

「手繋ぐと不便だね」

「お前…夢もロマンもないの」

違うもん。
だって、恥ずかしいじゃんか。
照れるに決まってんじゃん。

「なあ、ちょっと道外れよか」

「なんで?」

「あいつらどぎゃんなっちょーか気になるじゃろ?」

元太が少し後ろを歩いている翔くんたちを指差した。
と言っても、あたしには人混みでよく見えないけど。

「こっち」

元太に手を引かれるまま、屋台と屋台の隙間に身を潜めた。

そこから、いろんな人が通り過ぎるのが見える。
カップル、友だち、親子連れ。
いろんな人がいた。

そこにサオと翔くんが、ちょうどあたしたちの目の前を歩く。

「お」

「あ」

元太と声がかぶった。