放課後になって、あたしは自分の椅子に、後ろ向きに座った。

帰る準備をしていたサオが、手を止めた。

「話って何かね?」

「今度、祭りあるじゃん? その日、空いてる?」

「空いちょーけど…」

サオは顔を気持ち赤らめて、俯く。

「けど?」

あたしが尋ねると、さっきより顔を赤らめて、上目にあたしを見つめた。

「…ショウくん、誘うつもりだけん! だけん、サキとは行けん! せっかく誘ってくれたの…に?」

サオはやけに早口に言ったけど、言い終わるより早く、あたしは勢いよく立ち上がった。

「一緒に行こう! サオっ」

「だけん…人の話を」

「ショウくんも一緒っ!」

「はっ?」

サオはマヌケな声を出した。

「ゲンタに誘われたの、今日。一緒に行こうって」

「サキが?」

「ううん。4人で!」

サオは私を見上げたまま、目をぱちくりさせていた。

「行こうよサオ。4人で行こう」

あたしはサオの腕をつかみ、上下に大きく振った。
あんぐりと口を開けたまま、サオは固まっている。

「サオ…?」

反応のなくなったサオの顔の前で、手を振ってみた。
それでもサオは瞼をぱたつかせるだけで、動く様子はない。