「なあ」

机に潰れていると、頭の上から声がした。
頭を上げると、ちょうどズボンとワイシャツの境目くらいが目に付いた。

「なあ」

もう一度聞こえた声に、さらに体を起こすとそこにいたのは元太だった。

「………」

あたしはそのまま固まって動けない。
元太はそんなあたしを、不思議そうに見ていた。

「なあってば」

「は、はい!!」

あたしが大きな声を出して慌てて立ち上がると、元太はケラケラ笑っている。

「何立ち上がっちょるん?」

「や…別に? 別に、何も」

自分のテンパりように恥ずかしくなって、顔を隠しながら座った。

あたしの羞恥心なんてお構いなしに元太は一通り笑い終えると、話を切り出した。

「ちょっと、頼みちょーことがあるんだけど…」

「た、頼み?」

なんであたしこんな動揺してるの?

心拍数が落ち着かない。
何に焦ってるのかもわからない。

違う。コレは恋じゃない。
恋じゃないのに。
恋じゃないのに。

「なあ、今度の9月にある祭り。俺とショウとお前と時田で行かせんか?」

…だって、その理由を知ってる。

だから、違う。

「なあ…聞いちょる?」

「…え? 何て?」