でも、聞けない。

『いるよ』
『いないよ』

きっと、どんな答え聞いても動揺してしまうから。

『いる』と聞けば、期待するんだ。
でも、きっと不安にもなる。

『いない』と聞けば、落ち込むんだ。
でも、きっと安心もする。

あたしは元太のこと、好きなのかな?

…いや、好きだよ。
いい奴だし。

好きだけどこれは恋なの?
よく、分からない。

元太のこと、確かに気になるけど。
でも、その理由は…。

違う。元太は違うよ。

だってアレは、恋じゃない。

それに、サオが言うみたいに、1日中元太のこと考えてるわけじゃない。
元太と付き合いたいとも思わない。

きっと、だから、恋じゃない。

ただ…

元太の隣は、居心地がいいから。

あたしがこの席が好きな理由も、やっぱり、思い過ごしなんかじゃないよ。



視線を右に向けると、潰れていたはずの元太と急に目が合った。

パッと、慌てて目を反らした。

「なんかや?」

元太は体は倒したまま、顔だけこっちに向けていた。

「え?」

「え? じゃなくて、なんかね。さっき言いかけたこと」

視界が、チロチロと揺れている。
何も答えないままでいると、「気になるが」と元太は付け足した。