この席が好き。
そのもうひとつの理由は、思い過ごしか、否か。
夏の湿っぽい風が、私の髪を揺らす。
蝉時雨は、鳴り止むこと知らない。
暑さも耳障りな音も、すべてが邪魔なはずなのに、あたしは睡魔に襲われた。
周りの音が、どんどん遠ざかった。
君がいる。
だけど、名を呼べない。
君は、あたしに気づかない。
君が歩き出す。
あたしは後をついて行く。
君の後ろを、あたしが歩く。
あたしの前を、君が歩く。
名は呼べない。
声は届かない。
そして少しずつ、遠ざかる君。
あたしはその度に、寂しさを堪えた。
君の姿が見えなくなった頃、急に鳴り響いた携帯の着信音。
いつの間にか握り締めていた、携帯電話。
あたしは通話ボタンを押した。
『もしもし―――…』
そのもうひとつの理由は、思い過ごしか、否か。
夏の湿っぽい風が、私の髪を揺らす。
蝉時雨は、鳴り止むこと知らない。
暑さも耳障りな音も、すべてが邪魔なはずなのに、あたしは睡魔に襲われた。
周りの音が、どんどん遠ざかった。
君がいる。
だけど、名を呼べない。
君は、あたしに気づかない。
君が歩き出す。
あたしは後をついて行く。
君の後ろを、あたしが歩く。
あたしの前を、君が歩く。
名は呼べない。
声は届かない。
そして少しずつ、遠ざかる君。
あたしはその度に、寂しさを堪えた。
君の姿が見えなくなった頃、急に鳴り響いた携帯の着信音。
いつの間にか握り締めていた、携帯電話。
あたしは通話ボタンを押した。
『もしもし―――…』