桐原さん特製のクリスマスケーキというのは先程見せてもらった。

ピスタチオのムースとチョコレートのムースが層になっており、表面には真っ赤なコンポートされた苺がのっていて、とても美味しそうだった。これはきっと売れるだろう。だけど。


「あのー、店長」


私には大きな疑問が一つある。


「私は何で呼ばれたんでしょうか…?」


この荒稼ぎ大作戦に私は何も関係ないはず。もはや一人でクリスマスケーキ100個買えとかいう無茶振りをされるんじゃないだろうか?と怯えながら疑問を呈すると、


「そうそう、言い忘れてたんだけど明里ちゃんにも重要なミッションがあってね!」


そんな言葉と共にバチッとウインクが返ってきた。


「ミッション…?」


「クリスマスケーキに、イケメンパティシエと美人ウエイター、あとクリスマスにとって絶対に欠かせないものがある。一体なんだと思う?」


「は…?」


もはやイケメンパティシエと美人ウエイターはクリスマスに何の関係もないだろ、と思ったが敢えてそこには触れず私は首を捻った。


「うーん、店長よりももっとイケメンな店長…?」


「…違う。なんかすごく悲しいけどそれは違う」



パチッと店長が指を鳴らした。しかし何も起こらない。しかたなく店長が口頭で伝える。



「キララくん、例のもの持ってきてくれる?」


桐原さんがあからさまに嫌そうな顔をした。


「師匠、本気ですか?」

「もちろんさ」


はぁぁぁ~…という、海よりも深いため息をついて桐原さんが店の奥に消えた。一瞬、私に哀れむような視線が向けられたと思ったのは、気のせいだろうか…?