「…ところで小鳥遊」
莉央の話を全て無かったことにしたらしい牛奥が、落とした枝豆を拾い直して、私を見つめた。
「クリスマスはどうすんだよ?桐原さんの仕事が終わった後にでも会うのか?」
「…特に話してはないけど、多分会わないと思う。クリスマスは相当忙しいみたいだし」
「じゃぁどうすんだよ?ミルフィーユ行っても姉ちゃんと桐原さんが一緒にいるの見て辛くなるだけだろ?」
…その通りだ。
クリスマス、私はミルフィーユに行こうか行くまいか、迷っていた。
今年はイブが金曜日で、クリスマス当日は土曜日。クリスマス当日は休みだから、ミルフィーユに入り浸ろうと決めていたのに…今は勇気が、ない。
「…じゃぁこうしようぜ」
黙り込んだ私に、牛奥が明るい声音で言った。
「クリスマスは俺とデートしようぜ」
「無理に決まってんでしょ酔ってんの?」
速攻で冷静にそう言う莉央に、牛奥は「早乙女は黙ってろよ」とじっとりした視線を向けた。
「別にこの後に及んで小鳥遊狙ってるとかそんなんじゃなくて。ただ…小鳥遊は1人じゃないからって言いたかったんだよ!」
「…ありがと、牛奥」
やっぱり持つべきものは、同期だ。