お兄さんからも会釈をされたところで、信号が青に変わった。


それと同時に横断歩道を駆け抜ける。

引かれている白線だけを踏む勢いで、大股で駆け抜ける俺の姿をサラリーマンのお兄さんはまた驚いたような顔で見てるんだろうな。


でも今は人の目なんか気にしてられない。



走って、走って、走って。

早く行かないと。


誰よりも大切で、俺にとって一番特別な存在のもとへ。
――実花の、もとへ。



川が見えて来たら、もう蜂木橋はすぐそこ。



橋の上には、人影がひとつ。