夏休みが明けてから、奈津美ちゃんのよそよそしい感じは一切感じられなくなった。


私が声をかけるよりも先に明るく私に話しかけてくれるようになった。



「おはよう、奈津美ちゃん!!奈津美ちゃん、急がないとHR間に合わないよー」


「それは実花ちゃんも同じでしょ!!一緒に走ろー」



そう言って笑う奈津美ちゃんの手の中にあるスマホについている猫のマスコットのイヤホンジャックが静かに揺れた。


それを見て私は小さく微笑む。



「奈津美ちゃん、天網恢恢疎にして漏らさず…って分かる?」


「え?てんもうかいかい……?何かの呪文?」


「……なんでもない!!さっ、急ごう急ごう!!」



私はさっさと靴を履き替え、奈津美ちゃんの手を引いて廊下と階段を駆け抜けた。