「全く! 乱暴な奴だ!」

琶子を伴い眠りの森の自室に入っても尚、清は金成への呪いの言葉を吐き続ける。

「清さんのやり方が乱暴だからです」

そう言いながらも琶子は、大丈夫ですか? と金成から拳固を食らった清の頭を気にし見やる。

「フン、リハビリの最終段階だ。これぐらい当然だ」
「で、指輪を買ったのも酔わせたのも、そのためですか」

琶子はソッと指輪を撫で、清をジトッとした目で見る。
清は琶子と向き合い、彼女の腰に両腕を回し、背中で両手を組む。

「まぁ、それもあったが、それ以上に、お前を俺のだ、と目に見える形で印付けたかった」

少し不貞腐れていた琶子だが、清の言葉に、たちまち気持ちが晴れる。
それでも、ちょっと頬を膨らませ、「だから、あの写真を公開したのですか?」と意地悪っぽく問う。

「そう。印付けはバッチリだっただろ」

清は琶子の鼻に自分の鼻をくっ付け、クスクス笑う。

「あのカメラマン、時成ヒュウゴはドキュメンタリーカメラマンで、榊原財団が後援するフリーのカメラマンだ。本来、パパラッチみたいなことはしない奴だが、俺の頼みなら仕方がない、と渋々受けてくれた。奴の腕は本物だ。注文以上の出来栄えだ」

満足気に言い、「お前も綺麗に撮ってもらえて嬉しいだろ」と付け加える。

「本当に抜かりないんですね、清さんは」
「当たり前だろ、でないと榊原を背負って立てないし、お前も守れないだろ」

「だろ?」と笑い、唇にキスを落とす。

「たぶん、外の世界ではスゴイことになっていると思うが、大丈夫だ。全て想定内だ。任せておけ」