この写真は、その後、撮られたものだ。
琶子は雑誌の写真に目をやる。
三つ巴での食事を終えると、琶子は清に、和菓子店に寄って欲しい、とお願いした。
「明日、母に『きんつば』を持っていきたいの」
母親は粒あんのぎっしり詰まった『きんつば』が大好物だった。
「事前に言っておけば、三つ巴のを用意させたのに」
清は残念がりながらも、カーナビを操作し、そこからそれほど遠くない『桜の何処』という和菓子の老舗店に向かった。
雨は降っていたものの、それほど寒さは感じなかった。
店の駐車場に車を置くと、清は先に降り、傘をさし、助手席のドアを開けてくれた。そして、一つの傘で店に向かった。
その時の写真だ。
二人の間に漂う甘い雰囲気は、少し酔っていたからだろう、と琶子は今更ながら恥ずかしくなる。
そして、これ見よがしにバッチリ写る左手薬指の指輪。
なるほど、と琶子は清の魂胆を見抜く。
この写真は彼が撮らせたものだ。間違いない。あの真正策士め!
琶子の口角が次第に上がる。そして、それは大きな笑いになる。
「本当、彼には敵わない。見事にやられた! って感じです」
突然笑い出し、意味の分からないことを言い出す琶子に、薫と登麻里は戸惑いの色を濃くする。
「……大丈夫? 正気?」
「ショックが大き過ぎたのかしら?」
二人はオロオロと琶子を気遣い、思い切り雑誌を睨む。