「本当、何回食べても、美味い!」と則武は、とんすいに入れた肉団子に、七味唐辛子を盛大に振りかける。

七人の男女は、湯気を上げる大きな土鍋を囲み、思い思いの食べ方で、楽しそうに食事を進めていく。

「俺さあ、本来、鍋って嫌いなんだよね。だって、他人が、口を付けた箸を突っ込むんだぜ、間接キスも同じだろ?」

何という見解だ、と琶子は呆れるが、横に座る清も則武と同意見のようだ。

「でも、ここで食べる鍋は別。何度食べてもいい。美味い! 特に自作の肉団子、これ最高!」

則武は箸で抓んだ肉団子を口にポイッと入れて、満足そうにニカッと笑う。
これにも同意のようで、清がフッと口元を緩める。

「あら、それって喜んでいいのかしら?」
「そうね、家族同然って、認識してもらったようなものね」

薫と登麻里が「大家族ね。何役がいい?」「当然、私はママね」「あら、母親役は私よ」と不毛の言い合いを始める。

「おじちゃん、肉団子ばっかダメだよ。野菜も食べなきゃ」

桃花は、いつも自分が言われている言葉を、則武に突きつけ、熱々の白菜をフーフーと冷まし、則武の口元へ、アーンと持っていく。

まだパパと呼んでもらえない則武だが、蕩けそうな顔で大きく口を開け、白菜を食べる。

「桃花のアーンは、桔梗の次に最高だな。ほら、桃花もアーン」

鍋から肉団子を取り、冷ますと桃花に食べさせる。

琶子は則武と桃花の姿に、清と初めて会った時のことを思い出す。
そして、あの時のアーンは恐かった、と苦笑する。

「デートと言えば、琶子も榊原さんとデートするんじゃなった?」

思い出したように桔梗が尋ねる。
大きな椎茸を、口に入れたばかりの琶子に代わり、清が答える。

「そう、初詣に、初売りバーゲンに、本屋。本屋はKTG書房の本店に行こうと思っている。則武、有り難く思え」

「それは嬉しいが、何だか地味なデートだな」

則武は意外なチョイスに首を捻る。

「ああ、コイツのリクエストだ」

「って、お前、普通の初詣とかバーゲンなんて行ったことないだろ。初体験だな」

あっ「俺はあるぞ、コイツと」と則武の指が桔梗を指す。
エッと桔梗は驚き、「覚えていたの?」と意外そうに則武を見る。

「そりゃ、覚えてるさ。庶民の行事は、あれがお初だったからな」

それに、と則武は少し照れたように、ぶっきら棒に言う。

「お前と初デートだったし……」

キャーッ「ご馳走様」と登麻里と薫が身悶える。

「ちょっと待て! 普通のっていうのは何だ?」

清の質問にその場の全員が固まる。