突然話を振られ、まさか先日の清との会話を聞かれたのか、と琶子はビクリと体を震わせ、蓮根を皿に落とす。

「琶子ちゃん、何やってるの」

桃花の呆れ声に、琶子はアハハと誤魔化し笑いする。

「フーン、何かあったわね」

勘の良い薫がニヤリと笑う。

「吐きなさい」

里芋の入った大きなボールを、カウンター超しに薫に渡し、登麻里は琶子の首に腕を回す。

「あらっ、もしかして榊原さんとの結婚、決まったの?」
「……いえ、あの、まだ」

桔梗のストレートな言葉に、琶子はアワアワする。

「まぁ、時間の問題ね。あの榊原さんだもの」
「そうね、あの榊原だからね」

何があのだろう、と琶子が首を捻っていると「あのとは、どのだ」と心の疑問が言葉となって他人の口から発せられた。

「ウワォー、榊原さん、グッドタイミング?」
「その荷物は何ですか!」

薫と登麻里が同時に言葉を発する。そして、その後に続き、桃花が冷静な声で質問する。

「おじちゃん、引っ越し屋さんになったの?」

琶子も桃花同様、そう思った。

スーツ姿で、両肩に大きなバッグをそれぞれ一つずつ下げ、前も見えないくらい大きな箱を抱えた清は、ソファーまで来ると「ヨッ」とその上に荷物を置き、ホッと息を付くと、桃花に向かって言う。

「おじちゃんではない、榊原さんと言え!」

子供相手でも容赦ない清の態度に、大人気ない、とその場の全員が思う。

「年末年始、ここで過ごす。これはそのための荷物だ」
「ハイィィ?」

清の、身勝手発言に、住人全員の声が合唱する。

「嘘でしょう!」