「ご忠告有難うございます……ですが私、武術は合気道、柔道、空手は習得していますし、フェンシングもかなり上級者だと思います」
琶子が答える。
清は意外な言葉にギョッと琶子を見る。
「お前、有段者なのか?」
「昇級審査等は受けたことはありませんが、有段者の登麻里先生や薫さん、あっ、金ちゃんにも今は負けません」
「この華奢な体で金成に勝つというのか?」
唖然と見ていた清の顔が見る間に崩れる。
「お前、奥が深いな。本当に面白い奴だ!」
突然、声を上げ笑い出す清。
それを目にしたギャラリーはアッと驚く。
氷点下王子と呼ばれ、冷然な様を崩さぬ清の笑み。
マスケラ越しだが、それは天然記念物並みの珍しさだった。
おまけにその笑みを向ける相手が、何処の誰だか分からぬ謎の美女。
大抵のことには動じぬ輩たちとて、この場面を見て驚かない者はいない。
そして、その反応は二手に分かれた。
一手は温かな眼差しへ。
一手は嫉妬の眼差しへ。
清との四つ葉を狙う婦女子たちは、当然、後者だ。
「誰、あの女!」キィーとハンカチを噛み締め、琶子を睨む。