広いメインホールには、歴史にその名を刻む著名な人物たちが、煌びやかな衣装を身に付け、あちらこちらで歓談したり、食事をしたり、楽し気な様子でパーティーを楽しんでいた。

琶子の思考は物語のページを捲るように移り気易い。
さっきまでのシリアスさはもうない。
今はただもう、目の前の光景に、瞳をパチクリ見開き、呆気に取られていた。

「何ですかコレ! 皆さん本物に見えます!」
「何を言っているんだ、お前もだ」

興奮気に、清の腕を掴み揺する琶子の姿に、清はクッと笑みを零す。

「それはそうなのですが、全く違うというか……格が違うというか……」
「引けは取っていない。背筋を伸ばし自信を持て! お前は誰よりも美しい」

琶子の顔がポッと赤くなる。

「榊原さんって、絶対天然ですね。よくそんな恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなく言えますね」

「事実を述べたまでだ。それより名前を出すな。俺はルートヴィヒ2世だ」
「アッ、そうでした。仮面つけてるんでした」

二人の会話を聞いていた則武が笑いを堪えて言う。

「そう、ルートヴィヒ2世は天然だ」
「で、マリー・アントワネット、この状況、恐くない? 大丈夫?」

裕樹が心配気に聞く。

「ハイ、見知らぬ世界は恐いですが、あまりにも現実とかけ離れた世界なので、それほど恐怖は感じません」

「ん~、まぁ、そうだね」

裕樹が辺りを見回し納得する。