裕樹の予告通りだった。

控室として用意されたスイートルームで待機していると、則武がヒューッと口笛を吹き、徐にパソコンの画面を皆の方に向けた。

「見ろよ!」
「これってレンじゃない?」

裕樹が怪傑ゾロに扮した男性を指さす。

「アイツ舞台衣装のままだぜ。宣伝も兼ねてるな。抜け目ない奴」

則武がゲラゲラ笑う。

「市之助氏のご招待だもん、舞台だろうが何だろうが来るって」
「おっ、これモンテスパン侯妃か? 誰だ? 魅惑的でグラマラスな身体だな」
「則武、琶子ちゃんの前で卑猥な発言止めてくれる!」

裕樹がギロリと睨む。
琶子はそんなことより、何だ、この人だかりは! と画面を見つめる。

その答えはアナウンサーのコメントで分かった。
招待客は国内外問わず、各界の著名なセレブばかりで、その数八百名。
その情報を聞き付けたギャラリーとマスコミ関係者たちだ。

なるほど、と琶子は理解する。ギャラリーが増えるのも当然だ。

しかし、一週間でその数の著名人を集められる市之助って……。
琶子はブルッと身震いする。

よく見ていると、招待客の中には、マスケラはつけているが、正体を隠そうとしない人もいた。そんな人たちは、インタビューを受ければ素直に答え、気前よくポーズをつけ写真撮影に臨んでいる。

「招待客には、正体を絶対に知られたくない人間と、知って欲しい人間の二通りが居るんだ。彼らは後者、市之助氏のパーティーに出席した自分を周知してもらうことが仕事なんだよ」

琶子の疑問に裕樹が答える。

「市之助氏が開催するパーティーは、上流階級のステータス・シンボルになっているんだ。だから、招待され、出席したというだけで、周りからの評価が高まり地位が向上するんだ」

市之助の正体を知るに従い、琶子は、偉大過ぎる、と恐怖を覚える。