「アッ、それから、このマスケラをつけてね」

ミーヤはドレスと同じシャンパンゴール色の豪華な仮面を見せ、自分の目に当ててみせた。

子供騙しの粗雑なマスクと違って、このマスケラなら誰だか分からない。
ここまでの成り行きは腹立たしい。だが、事態を回避できないなら、やはり正体は隠したい、なるほどこれなら、と琶子は安堵の息を吐く。

それにしても……と琶子は三人のイケメンに目をやる。
それぞれ実在の人物に扮しているらしいが……。

カール大帝に扮した則武。ヨーロッパの父と呼ばれるフランク王国の君主らしくキリリとした威厳ある衣装だ。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトに扮した裕樹。音楽に関しては真摯で至高の聖人らしく貴公子を気取った衣装だ。

ルートヴィヒ二世に扮した清。第四代バイエルン国王で美貌の狂王と言われていたらしいが、まさにそのもの。美しき変人らしい衣装だ。

三人の衣装も写真集と同じでかなり凝っていて、値が張る代物のように見えた。
言わずもがな、このマリー・アントワネットの衣装もだ!

いったい幾らするのだろう? と琶子はフンワリ広がるウエスト辺の豪華な薔薇の刺繍に目をやり、破いちゃいけない! 弁償できない! と下世話な溜息を一つ付く。