薔薇風呂は最高に優雅だった! エステは最高に気持ちよかった!
だが……今、琶子は天国から地獄に落ちた気分だった。

「くっ、苦しいのですが……」

ギューッと締められたウエストを見つめ、琶子はこれ以上引っ込められない! というほどお腹を凹める。

そして、思う。
どうしてこんな状況になったのだろう……と。

それから、更に思う。
これでは美味しい物も食べられない。中世のお姫様たちは可哀想に……と。

そして、感謝する。
ファッションの歴史を変え、コルセットから女性を解放したココ・シャネルよ、ありがとう。万歳……と。

「お嬢様、覚えておきなさい。『美』は一日にしてならず! そして、『美』は『体力』です。これぐらいで根を上げるようでは、美の世界からご招待されませんことよ」

『よ』で思い切りウエストの紐を絞るミーヤ。
琶子は、ご招待ご辞退いたします、と心で叫び、「ギョエー」と悲鳴を上げる。

クローバー三人衆はそれぞれ支度を終え、隣の部屋でマッタリとお茶を飲んでいた。

「魔女が呪いでもかけたか!」

悲鳴を聞いた途端、やっぱり、とニヒルな顔をヒッと崩すカール大帝。

「僕、このまま失礼してもいい?」

ビクビクと扉のあちら側を気にするヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。

「……」

無表情で無言のまま、カップに口を付けるルートヴィヒ2世。

その後、幾度かの悲鳴が聞こえ、やがてピタリと静かになる。
静かになったらなったで、余計に気になるのが人間だ。

三人がドアを見つめていると、ガチャッと音がし、ドアが開く。

「お待たせいたしました」

妖艶な笑みを浮かべた魔女……もといミーアが現れる。