「チョークを全部使っても、また新しいチョークが使えるとかは?」と碧人が提案すると、すかさずオークにダメ出しを食らう。


「ダメだろ。一人につき、使えるチョークは一本のみ。がルールだからな」


「じゃあ、じゃあ。その一人一本しか使えないってルールを変えちゃえば?」と私が言ってみても、返って来る答えは同じ。

レイから言われてしまうのだ。


「無理よ。オークも私も、予備のチョークなんて持ってないもの」


人間二人と妖精二人。

黒板の前で頭を捻ってみても、たいした事も思いつかない。


ただ、確実に残り少なくなっている七色に輝くチョークを手に、私はレイが発した言葉が引っ掛かった。


「……予備のチョーク……」

「涼香?」


ポツリと呟く私を覗き込んだ碧人に向かい、私は勢いよく顔を上げた。

しかし、タイミングが悪かった。

私は碧人の鼻に頭突きしてしまったのだ。

碧人は「痛ってぇ」と鼻を押さえ、その場にしゃがみ込む。


「あ、ごめんごめん。大丈夫?」

「なワケないだろ。あー、鼻血でそう」

「うそ、ティッシュ……」


慌てる私の手を掴んだ碧人に引っ張られ、私はその場に尻餅をついた。


「痛ったいなぁ」