「……これで記憶が消えることは無いんだよね?」
文字の消えた黒板を見つめながら、そう呟いた私の隣りには碧人が肩を並べた。
これは、私の望む事。
ずっと碧人に片思いしていた、この恋を叶えたいと思っていた。
碧人の気持ちを知る事が出来て。
自分の気持ちも、碧人に伝える事が出来た今。
私が残りのチョークを使い切ってしまったら、レイとはサヨナラしなければならないんだ。
そんなの嫌。
レイと、もっと一緒に居たい。
忘れたくない。
忘れてほしくないと思うから。
涙が頬を伝う。
その涙を右手で拭うと、私は碧人に向かって言った。
「私の願い事、叶うよね?」
「……どうかな」
予想していた答えとは違う碧人の言葉に、私は隣に立っている碧人を見上げる。
碧人は冗談を言ったわけじゃないという事は、その横顔が物語っていた。
「今の願い事は、涼香の持つチョークが使い終わった時に、叶ったかが分かる事だろ。今の段階では何とも言えない」
「あ……」
「使い切ってみなければ、分からない」
碧人のいう事は正しい。
私は、なんてアホな願い事をしてしまったんだろう。
結局チョークを使い切らなければ分からないなんて……。