口をつぐんだままのレイは、私に背中を向けた。

それが何を意味しているのか分からない。

けれど、そんなレイの代わりに口を開いたのはオークだった。


「そんなに知りたいなら、俺が代わりに教えてやるよ」


オークは碧人と私の周りをフワリと飛んで一回りすると、チョークを握りしめている私のコブシの上に腰を下ろした。


「オーク?」

「……あのな、粉々になったチョークは『使い切った』とみなされて、そのチョークを渡した妖精は一度眠りにつくんだ」


妖精から七色に輝くチョークを手渡された人間が、チョークを使い切った時。

その人間の願いは、全て叶えられたということになり、今まで妖精が存在していたという記憶が消える。

妖精を見る事が無かった日常を送り始める。

そして、妖精は妖精界で一度眠りにつく。


時が経ち。

目覚めた妖精は、関わりをもった人間の事を忘れ、また別の人間に与えるためのチョークを手にするのだ。とオークは簡単に説明してくれた。


「待って。それじゃあ、私は全部忘れちゃうの? レイも?」

「あぁ。そういう決まりなんだ」


そんなわけない。

私がレイを忘れちゃうなんてこと、絶対にないよ。