「オーク。俺は、お前に出逢えて感謝してる」
「なんだよ、突然。気持ち悪ぃなぁ」
照れているオークと、それを眺めているレイの目の前で。
碧人は二つのチョークを握りしめた。
「あ、ちょっと。碧人! そんなに強く握ったら、チョークが折れちゃうよ」
「いいんだ。もう、これは必要ない」
ギュッと握りしめる碧人の手から、焦りながらチョークを救出しようとしたのは、レイだった。
「返してよ。あなたが自分の分のチョークをどうしようと、私の知った事じゃないけど。私が涼香に渡したチョークは返しなさいよっ」
碧人の手に纏わりつき、チョークを取り返そうとしているレイは、どこか必死になっていて。
その行動に、私も碧人が握っているコブシに手を置いた。
「何をするつもりなの? 碧人、ちゃんと話して。説明してくれなきゃ分からないよ」
とにかく、一旦碧人を止めなければと思った。
突然、チョークを粉々にしようとしている碧人。
それを阻止しようと必死なレイ。
きっと、碧人の行動が何かを変えようとしていると思った。
それはオークも私と同様に感じていたようで、戸惑う事も動揺することもなく。
落ち着いた口調で碧人に告げた。