「まったくだよ。オークと出会ったおかげで、俺はガキの頃に戻ってワザワザ高校に忍び込む為に野球部の部室裏の金網を破ったり、見つかったらマジで犯罪者だ」

「なんだよー。最初は結構、楽しんでたくせに」

「うるさい。もっと簡単な事だと思ってたんだよ」


あれは。

あの破れた金網は、元々碧人が開けたものだったのか。

それを、高校生になった私たち皆で偶然見つけた。



碧人は独りで何度も何度も。

過去と現在と未来で。

私の気持ちを聞こうとしてくれていたなんて。

そんな事も知らず、私は碧人が作ってくれていたチャンスを無駄にしていたなんて。


「碧人、ごめん。ごめんね」

「涼香?」


手を伸ばし、碧人の腕に触れる。

私を見つめてくれている碧人に、ちゃんと素直に伝えなければ。

碧人と私は、この先もやっぱり何度も後悔して。

何度も同じことを繰り返すことになる。


それが分かっているのだから。

私の気持ちを聞こうとしてくれている碧人に伝えけくちゃ。


「私は、ずっと碧人の事が……」

「好きだよ」

「うん。す……えっ?」


言おうとしていた言葉を、碧人に先に言われてしまった。


「ずっと、涼香のことが好きだった」