碧人を疑いたくはない。

けれど、私自身が最後の手段としていた願い事だ。

どうしても、碧人の気持ちが私に向かなにのなら、いっその事、碧人の気持ちを変えてしまおうとしていたから。


「それは、残念ながら出来ないぜ」


私の疑問を瞬時に消し去ったのは、それまで黙っていたオークだった。

オークは私に、教えてくれた。


人間が間違った使い方をする可能性があるという事を学んだレイは、妖精界の主に頼み込み、妖精たちの持つすべてのチョークに制限をつけさせた。


一人の人間に渡せるチョークは一本だけ。

本当に、心から願う事でなければ、七色のチョークは効果を発揮しない。

人の気持ちを、チョークを使い安易に変えることは出来ない。


数々出来たルールを一つでも破れば、チョークを渡した妖精は姿を消される事になる。

妖精自身にもリスクのある事になり、適当にチョークを渡す妖精も数を減らしていったらしい。


「まぁ、レイは緩かったルールを厳しくした張本人だからな。未だに教室で目を光らせてる。俺以外の妖精たちは、人間との関わりを避けて何年も前に妖精界に帰ったよ」

「そうだったの……」

「俺みたいに、たまーにこっちに遊びに来て。ほら、碧人みたいな男らしくねぇ奴にチョーク渡して遊んでる妖精もいるけどな」


なぁ。なんて、オークは冗談交じりに碧人の方を向く。