レイの持っている七色に輝くチョークで黒板に願い事を描く。

願い事は、恋愛にまつわる事でも友人関係でも、何でもいいという。

絵で記しても、文字でも、文章でも。

何でも構わないのだと。


「本気で願えば、黒板に書いた通りの世界に変わるの!」

「何を冗談言って……」


レイの話を全部鵜呑みには出来ない。

だって、そんな事をしたら、このチョークを持った人間だけが幸せを手にする事になる。


自分の都合のいいように事実を塗り替えてしまうんじゃないの?


「そんなに疑うなら、試してみれば?」


例えば、さっき繭が告白した事を無しにするとか……。なんて、言い出したレイ。

さっきの出来事がなかった事になれば、私の失恋決定も変わるかもしれない。

変わらなくとも、繭より先に気持ちを伝えるくらいの時間は稼げるかもしれないと言うのだ。


手にしている七色に輝くチョークを見つめる。


本当に? 本当に、さっきの現場を無かった事に出来るの?

そんな事、してもいいの?


「ほら、早く早くー」と、急かすレイにチョークを持った右手を黒板に当てられる。


ゴクリと唾を飲み、私は黒板にチョークを走らせた。


もしも。

もしも、願いが叶うのなら……。



【繭は未だ、碧人に告白していない】