碧人は、自分が手にしているチョークがある限り。

私の本心を聞くため。

私の、碧人に対する気持ちを知るためだけに。

何度でも「その時」を、やり直そうと決めたのだという。



碧人の話を聞いて、私は気が付いた。

やり直している碧人の他に、私がチョークを使いだしてしまったから。

「今」に帰ると、少しだけ。

ちょとだけ、何かが変化していたのだ。


シチュエーションや、感情が。

「何かおかしい」と思ったのは、そのせいだったのだ。

私が未来を変えてしまったからだけではなかった。



そして、新たな疑問が浮かび上がる。


「碧人、もしかして。そのチョークで私の気持ちを変えた事はない?」

「え?」


ひとつだけ、あり得る事。

私が碧人を想っていたように、碧人も私を想っていたとして。

その、七色のチョークで私の気持ちを操った、という事は考えられないこと?


【涼香は碧人が好きだ】と。


【碧人は涼香が好き】と黒板に書いてしまいそうになっていた私の様に。

なんとも思っていなかった気持ちを、いつしかコントロールされてしまっていた……という可能性は無いの?