碧人は嘘をついていない。

それを証明するように、真っすぐに私を見つめている。


10年後に行った碧人。

きっと、碧人は27歳の私とも会っている。

でも。

その私は、本当の27歳の私だったとは言えない。

私も10年後を覗きに行ったのだから。


「何度も10年前と10年後をやり直して。後悔していた事をやり直してた。なのに、全然上手くいかない。たいして状況が変わらないんだ。どんなに変えようとしても、ひとつだけ変わらない」

「碧人?」


もしかして、私がチョークを使ったりしたから。

碧人が変えようとしていた事を、知らず知らずのうちに妨害してしまっていたの?


「いつも逃げられるんだ、涼香に。ガキの頃に戻っても、素直に気持ちを伝える事が出来なくて。中学の頃も。今も、10年後も……」


チャンスがあった頃に行ってみても、必ず私が逃げ出してしまうのだという。

そんなことは無い。

私はいつだって、碧人だけを想ってた。

碧人だけを見つめてきた。

そんな私に、碧人が気持ちを伝えようとしてくれていたのなら、絶対に気づくはずだもの。


「私……は」

「だったら、俺が気持ちを伝えるんじゃなく、涼香の気持ちを聞こうと思た」