私は繭に責められ、碧人は繭を連れて私の前から居なくなった。


その後の二人の事は、何一つ知らない。

私はレイと出会い、七色のチョークを手にしていたから。


「俺は、話の続きがしたいと言う野々下に屋上まで連れてこられたんだ。で、改めて野々下の気持ちを聞いた」

「やだ……。聞きたくない」


とっさに、耳を塞ぐ私は臆病者だ。

あの後の二人が、どうなったか知りたいと思っていた半面、事実を受け入れたくない私は、レイの手からチョークを受け取り、繭の告白を無かったものにしたのに。

碧人の話から予測できるのは、繭を受け入れたのだと言う報告だろう。


私が一番、聞きたくない。受け入れたくない事実。


「聞けよ。俺は、この学校に入学した頃に屋上でオークに声をかけられてた。お前と同じ様に、オークからこれを渡されてたんだ」


碧人が広げている掌には、私の持っている七色に輝くチョークが乗っていた。


「それ、私の……」


手を伸ばし、チョークを取り戻そうとする私から逃れる様に、碧人は広げていた手を握り。

七色に輝くチョークを制服の胸ポケットにしまい、私をまっすぐな瞳で捉えると信じられない言葉を口にした。


「このチョークは俺の。俺はコレを使って、過去と未来をやり直してた」