涙ぐむ私の目の前に突然現れたのは、ブロンドの髪をお団子にした、水色のミニワンピースを着ている小さな女の子。
背中には、透き通るような羽が生えていて。
つま先にパフの付いた靴を履いていた。
「だ、誰⁈ ってか、何?」
驚き、尻餅をつく私を笑いながら見下ろす身体は、光を放っている。
どう見ても、この世の物じゃない。
夢を見ているの? これは幻? と涙で滲む目を何度も擦ってみても、目の前の物体は消えないのだ。
「突然の失恋のショックで頭おかしくなった⁈」
私は自分の頭をグシャグシャに掻き乱すも、目の前でフワフワと浮いているのは、子供の頃に読んだ絵本で見た事がある「妖精」そのもの。
「え……と、どちら様で?」
「ふふっ。私はレイ。泣き虫でヤキモチ妬きの妖精だから、あなたの前に現れた。というか、あなたが泣き虫でヤキモチ妬きだから、私が見えるのよ」
待て待て。
私は、現実主義者で。
こんな不思議な事を、あっさり受け入れるような性格じゃない。……はずなのに。
目の前には否定しようにも、否定出来ない事実として存在している妖精がいる。
「私、別に泣き虫でもヤキモチ焼きでもないけど」