ーードンッ



公園の入口に差し掛かったところで、前方から走って来た人にぶつかった。


その人物を見た瞬間、瞬きをするのも忘れて大きく目を見開く。


高鳴る鼓動。


なんで、しずがここに……?


うつむき気味にペコッと頭を下げて、すぐに去って行こうとするしず。


だけど、なんとなく様子がおかしい。


何かあったのか……?



「しず……?」



気になって仕方なくなった俺は、無意識にしずの名前を呼んでいた。


顔を上げたしずと目が合うと、その瞳は戸惑うように揺れて動揺していることがうかがえた。


なんでそんなに泣きそうな顔をしてるんだよ……?


しばらく見つめ合った後、しずは何かを口にして俺の前から走り去った。


いつも頭の片隅にあったしずの存在。


どれだけ遠ざけて考えないようにしていても、常に意識の中に存在していた。


もう忘れよう。


あれだけひどいことを言って遠ざけたんだ。


今さら後悔してるとか言えるわけないだろ。


何度も何度もそう繰り返して、しずのことを忘れようとして来た。


目を背けて、逃げて来た。


だけど……。


走り去るしずの背中を追いかけたくなった。


追いかけて何があったのか聞いてやりたい。


でも、自分から突き離しておいて今さら追いかけるなんて、そんな都合のいいことが許されるはずがない。