私はスマホの着信音で目を覚ました。


まだ寝ぼけた頭のまま、枕元に置いていたスマホに手を伸ばす。

ディスプレイで発信元を確認した。


住友 和也


その名前に一瞬で頭が冴え渡った。


彼のマネージャーだ。

メジャーデビューするはずだった事務所の人で、準備期間から含めて結局お世話になったのは半年間程だった。


住友さんから電話がかかってくるなんて、彼に関することに決まっている。


しっかり頭を回転させるために、体を起こしてベッドの上に正座をして、発信ボタンを押した。


「もしもし、井上です」


何の要件だろう。住友さんと話すのは彼のお葬式以来だ。


『優梨花さん、お久しぶりです、住友です。朝からごめんなさい』


「いえいえ!」


時刻は平日の10時半。

そんなに朝早くはない。


しっかり頭を起こそうと思ったのに、私の声から寝ていたのがばれてしまったのだろう。

どうしても朝が弱いのだ。


恥ずかしい。


「どうかなさいましたか?」


私は出来るだけお腹に力を入れて、しゃっきりした声を出すように努めた。


彼が亡くなった今、事務所と彼との窓口は私になっている。

とはいっても、電話がかかってきたのは初めてだった。


住友さんは言葉を選んで、ゆっくりと話し始めた。

物腰が柔らかく、話す人に癒しを与えるような人だ。