すると、クククっと今まで聞こえていなかった音が耳に入った。
何の音だろうと顔を上げると、彼が口元に小さく拳を当てて肩を震わせている。
笑っているのだと気づくのに時間がかかった。
え、え、
さっきまでフリーズしてたのに!!
もう完全に私の頭はショートして、呆気に取られてしまった。
彼はひとしきり笑った後に、種明かしをしてくれる。
「ごめんごめん、あまりにも慌てるから面白くて」
……どうやら少しからかわれているらしい。
思えば、彼にからかわれたのはこのときが初めてだった気がする。
これ以降、何度も何度も彼にからかわれることになる。
この頃はまだ拗ねたり、言い返したりすることはなかった。
はじめの頃にもっと抵抗していれば、彼にからかわれるのがお決まりにならなかったかもしれない。
この時は、何て答えたら良いのか分からず黙っていると、彼はぱっと立ち上がった。
「そんなに気に入ってくれたなら良かった」
ああ、またお日様みたいな笑顔。
恥ずかしくて強張っていた心が、ふわりと解けていく。
彼が笑うだけで何て簡単なーー。
彼に感情が振り回されてばっかりだ。
こんなこと彼に出会うまでは無かったことで、慣れないから疲れる。
けれど嫌な気は全くしない。
彼が笑う、ただそれだけで私は堪らなく嬉しいのだ。
うん、私の出来る限りたくさんの笑顔を乗せて頷いた。
彼に好ましい想いが最大限伝わるように。
彼は満足そうに笑ってから、くるりと私に背を向けた。
ギターを椅子に器用に立て掛けて、部屋の奥へと歩き窓を開け放つ。
窓から入ってくる気持ちのいい風。
その風を受けて、彼の髪がさらりとなびく。
綺麗な曲線を描くその髪から、私は目が離せなくなった。
3月の朝にしては、少し眠たくなってしまうくらい暖かい、過ごしやすい気候だった。
もうすぐ春がやって来るのが肌で感じられた日だった。
いつもなら1週間もすればそんなことすぐ忘れてしまうけれど、この日は気候の良さもまとめて忘れられない一日になった。
愛おしい一日になった。
何の音だろうと顔を上げると、彼が口元に小さく拳を当てて肩を震わせている。
笑っているのだと気づくのに時間がかかった。
え、え、
さっきまでフリーズしてたのに!!
もう完全に私の頭はショートして、呆気に取られてしまった。
彼はひとしきり笑った後に、種明かしをしてくれる。
「ごめんごめん、あまりにも慌てるから面白くて」
……どうやら少しからかわれているらしい。
思えば、彼にからかわれたのはこのときが初めてだった気がする。
これ以降、何度も何度も彼にからかわれることになる。
この頃はまだ拗ねたり、言い返したりすることはなかった。
はじめの頃にもっと抵抗していれば、彼にからかわれるのがお決まりにならなかったかもしれない。
この時は、何て答えたら良いのか分からず黙っていると、彼はぱっと立ち上がった。
「そんなに気に入ってくれたなら良かった」
ああ、またお日様みたいな笑顔。
恥ずかしくて強張っていた心が、ふわりと解けていく。
彼が笑うだけで何て簡単なーー。
彼に感情が振り回されてばっかりだ。
こんなこと彼に出会うまでは無かったことで、慣れないから疲れる。
けれど嫌な気は全くしない。
彼が笑う、ただそれだけで私は堪らなく嬉しいのだ。
うん、私の出来る限りたくさんの笑顔を乗せて頷いた。
彼に好ましい想いが最大限伝わるように。
彼は満足そうに笑ってから、くるりと私に背を向けた。
ギターを椅子に器用に立て掛けて、部屋の奥へと歩き窓を開け放つ。
窓から入ってくる気持ちのいい風。
その風を受けて、彼の髪がさらりとなびく。
綺麗な曲線を描くその髪から、私は目が離せなくなった。
3月の朝にしては、少し眠たくなってしまうくらい暖かい、過ごしやすい気候だった。
もうすぐ春がやって来るのが肌で感じられた日だった。
いつもなら1週間もすればそんなことすぐ忘れてしまうけれど、この日は気候の良さもまとめて忘れられない一日になった。
愛おしい一日になった。