「好き」



心の中で思っているだけだと思っていたから、彼の反応を見て初めて声に出てしまっていたことに気が付いた。


スローモーションがかかったみたいに、彼の表情がだんだん引きつって固まっていく。

それに合わせて私の頭にどんどん血が上っていくのが分かる。


「待って待って、違うの!」


何て言ったらいい!?


「違うんじゃないんだけど!!」


何て言い直したら良い!?いや、言い直すことは無いんだけれど!


「あー!待って!お願い!待って待って待って待って!!」


間違えたことは言ってないんだけれど!

こんな風に伝えたかったわけじゃないというか!

まだ早いっていうか!

心の準備が出来てないっていうか!


好きって言いたかったのは曲で!

これだったら告白してるみたいじゃない!

いや彼を好きなのは嘘じゃないんだけれども!


一度はすっきりした頭をまたもぐるぐるとさせていると、昨日の光景がフラッシュバックした。


何の脈絡も無く発せられた彼の「好き」という言葉。

あれはこんな風に出た言葉だったの!?


図らずも知ってしまった感情に、突然の告白の謎は解けたし、こんなに溢れかえるくらい想ってくれたのも嬉しい。



いや、今はそんなことを考えてる場合じゃなくて!!


紅潮した顔を隠したいやら、頭がパンクしかけるやらで、とうとう頭を抱えてしまう。