やっと手を離してくれたのは、人気のない体育館裏だった。

二人で話すには少し遠めの距離で向かい合う。

彼を窺うと、話し始める言葉を探しているようだった。


少し間をおいて、はにかんだ笑顔の彼が話し始める。


「昨日は突然ごめんな」


私はぶんぶんと首を振った。

確かに驚きはしたけど、不快になった訳ではないし彼が謝る必要はない。


それと同時に、やっぱり昨日のは告白だったんだという事実が色味を増してくる。


さっきまでは現実逃避ばっかりしていたけれど、真剣な彼を見て、こちらも本気で対応しようと腹を括った。


「昨日の言葉、本当だよ。あんな突然言うつもりは無かったんだけど……でも、いつかは言おうと思ってた」


いつかは言おうと思ってたーーその言葉に奥に含まれた意味。

彼の頭の中では予測されていた出来事だったのか。


彼は目を泳がせながら話している。こんな自信なさげな彼は初めて見た。


「橋本は昨日頷いてくれたけど、あれは肯定だと受け取っていいの?」


一応プラスの意味で伝わっていたみたいだ。少しだけ安心する。


答えはひとつに決まっていた。


私はこくりと大きく頷いた。

今なら自信を持って頷ける。


こんな私の何を好きになってくれたのか分からないけれど、私の気持ちに嘘はない。