ーージャブンッ
波が大きな音を、周囲に響かせた。
「はあっ!コホッ、ケホッ・・・・もう!」
私は濡れた前髪を掻き分けながら、灯に怒る。
ポニーテールにしていたため、前髪以外の髪が乱れることはなかったけれど、問題はそこじゃない。
急に飛び込むのは、心臓に悪すぎる。
特に、私みたいに泳ぎが得意じゃない人間には、死んじゃうんじゃないかって思うくらいの恐怖だ。
「ははっ、ごめんごめん」
「思ってないでしょ!?」
滅多に怒らない私が怒っているからか、灯は面白そうに笑う。
「あー、おもしろ。冬穂、顔怖いって」
「ともが急に飛び込むから!」